ジャンル・エリア : 三重 | 文化 | 歴史 2019年06月07日
津市一志町波瀬にある旧一志波瀬郵便局舎を改装したカフェが人気を集めている。昭和の趣や懐かしさを求め、地元住民だけでなく、県外からも多くの人が足を運ぶ。内外装に当時の面影を残す建物は、3月に国の登録有形文化財に指定されたことで再び脚光を浴びている。
真っ赤な丸型ポストが目を引く「カフェ古pos(コポス)」は、山あいの住宅地にある。洋風の装飾が特徴的な局舎は、1931(昭和6)年建築の木造平屋建て。マスターの藤岡信貴さん(41)の曽祖父で、当時局長だった石井常雄さんが自宅敷地内に建てた。近くに別の局舎ができた72年以降は、ほとんど空き家状態だったという。
局舎を引き継いだ藤岡さんが改装に乗り出し、2017年10月にカフェとしてオープンさせた。地区には近所の人が気軽に集まって話せるような店がなく、藤岡さんは「憩いの場として活用してもらいたかった」と話す。
改装は最小限にとどめた。間取りだけでなく、「みなり正しく笑顔で仕事」「正しい結束 生まれる信用」といった壁の標語が当時のまま残る。電話交換業務に使われた電話機や金庫、「空襲警報発令中」の看板も歴史を感じさせる。
カフェを象徴するポストは、藤岡さんの祖父が一度は手放したが、市内の郷土資料館の倉庫に保管してあったのが見つかり、40年近い時を経て元の場所に戻った。
昭和のヒット曲が流れる店内には、藤岡さんが収集した昔ながらのおもちゃや雑貨がところ狭しと並ぶ。ソフトビニール製の怪獣や瓶詰めの炭酸飲料、お菓子のパッケージに看板…。内装と相まって、タイムスリップしたかのような空間が広がる。
藤岡さんは「カフェにしたことで、いろいろな人に郵便局に来てもらえるようになった。古き良き時代を感じて、懐かしんでもらえたらうれしい」と話す。
(斉藤和音)
【土平編集委員のコメント】
今日紹介したのは、津市を対象にした津市民版の記事です。30年以上前に津市で勤務していた際、三重県内の古い建築物を紹介する連載を担当したことがあり、各地を訪れました。当時は「昭和」の建物は取材の対象外だったのですが、この記事の中には「昭和の趣や懐かしさ」との表現があり、すっかり昭和も歴史になったとの感慨を抱きます。写真を見ると、赤い丸型ポストがよく似合う外観。「空襲警報発令中」などの看板もよく似合います。興味を持たれた方は、ぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょう。