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【三重】重文の仏像を間近に「はいチーズ」 名張・弥勒寺

ジャンル・エリア : 三重 | 文化 | 神社・仏閣  2019年09月05日

重文の木造十一面観音立像(右)などのすぐ前で写真撮影を楽しむ参拝者=名張市西田原の弥勒寺で

重文の木造十一面観音立像(右)などのすぐ前で写真撮影を楽しむ参拝者=名張市西田原の弥勒寺で

 国の重要文化財(重文)とのツーショットを、積極的に勧める古刹(こさつ)が名張市にある。国宝級の文化財の見学に制約を設ける施設が多い中で、参拝者の撮影を自由にしたきっかけは寺離れへの危機感。会員制交流サイト(SNS)で「太っ腹なお寺」と評判になり、寺に御利益をもたらしている。

 重文の仏像を公開しているのは同市西田原の弥勒(みろく)寺。736年に建立され、重文2体、県文化財2体など計12体の仏像があり「仏像寺」とも呼ばれている。

 平安後期の木造十一面観音立像(高さ1.7メートル)と木造聖(しょう)観音立像(同1.8メートル)の重文2体は、本堂内の裏堂で保管していたが、10年前から公開を始めた。本堂は耐火構造で24時間防犯カメラが監視。触れることはできないが、間近で参拝でき、撮影も自由だ。仏像の脇には「ツーショットして下さい」との張り紙もある。

 文化庁の担当者は「保存方法は基本的に所有者に任せているが、信仰上の理由や保護の観点から撮影禁止のケースが多く、ここまで間近なのは珍しい」と話す。

 弥勒寺が公開に踏み切ったのは、現在90軒ある檀家(だんか)の減少や高齢化を見越してのこと。檀家の総代長を務める杉尾章(あきら)さん(72)は「格式高さより親近感。とにかく中に入ってもらうことが寺を守ることになる」。檀家にも「仏像の宝庫である寺を守っていくには、多くの人に寄ってもらうことが大事」との意見が多かったという。

 ウオーキング仲間と参拝した名張市の女性(78)は重文の仏像と記念撮影した。「こんなに近くで撮らせてもらえるとは、地元なのに知らなかった。間近で見られ、優しくほほ笑んでくれているよう」と目を細めた。

 SNSには仏像ファンを中心に「写真撮影もウエルカムなお寺なのでぜひ多くの人に訪問してもらいたい」などの書き込みも。目の前で写経をしたり、何時間も対話したりする人がいるなど、参拝者は10年前の倍となる月平均100人以上にまで伸びている。杉尾さんは「小さい田舎のお寺は先細りが懸念されるだけにありがたいこと。にぎわいを継続させていきたい」と歓迎する。

 拝観料500円、午前9時半~午後4時半。(問)弥勒寺=0595(65)3563

 (飯盛結衣)