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【長野】信州の自然の中で酔う 日本ワインの産地へ 長野県塩尻・安曇野市

ジャンル・エリア : グルメ | 果物 | 特産 | 甲信越  2019年10月03日

ブドウ畑に立つ「丘の上幸西ワイナリー」のオーナー、幸西義治さん=長野県塩尻市で

ブドウ畑に立つ「丘の上幸西ワイナリー」のオーナー、幸西義治さん=長野県塩尻市で

 渡辺淳一の小説「失楽園」で有名になった高級赤ワイン、シャトー・マルゴーを一度だけ飲んだことがある。20年近く前の話だ。素人の舌にも分かりやすかったんだろう。それからワインを飲むようになった。安価な銘柄ばかりだが、なぜか日本産は飲んでこなかった。最近、日本ワインが人気だと聞き、名産地を訪ねることにした。

 長野県塩尻市。明治期から続く老舗ワイナリーもあるが、今回は新設の醸造所を訪れた。

 丘の上幸西(こうにし)ワイナリーは、オーナーの幸西義治さん(61)が隣接する畑で自ら育てたブドウを使い、ワインを醸造する手作り感いっぱいのワイナリーだ。大企業を早期退職した幸西さんは昨春までの4年間、「塩尻ワイン大学」(塩尻市など主催)の第1期生としてワイン造りを学び、今秋、初醸造の予定だ。

 訪ねたときは、収穫直前の赤ワイン用のメルロー、白ワイン用のシャルドネなどがたわわに実っていた。今夏は本格的に暑くなるのが遅く、この地域では例年より2週間程度、ブドウが熟すのが遅れたという。

 醸造所で、冷えたシャルドネを飲んだ。幸西さんが昨年作ったブドウを委託醸造して完成させたものだ。シャルドネらしい爽やかな酸味がある一方、どっしりとしたコクも感じられるワインだ。今年は初醸造、来年は木樽(だる)を使った醸造にも挑戦するという幸西さんは、将来について「ワイナリー自体を大きくするよりは、ワイン大学の仲間がワイン造りを始める足掛かりになりたい」と語る。

 市内には、同じく今年から醸造開始のドメーヌ・スリエがある。ここは米粉パン店を併設しており、既ににぎわっている。

「スイス村ワイナリー」の内方知春さんと、ワインを熟成中の樽=安曇野市で

「スイス村ワイナリー」の内方知春さんと、ワインを熟成中の樽=安曇野市で

 塩尻市から北に向かうと、ワイン産地としては新興の安曇野市がある。地産品やワインの販売店、乗馬場などがある信州安曇野スイス村の敷地内に、スイス村ワイナリーがある。元々りんごジュースを作っていたが、1997年からワイン造りにも進出。担当者が機械でブドウを搾ったり、出来上がったワインを瓶詰めしたりする工程を、窓越しに見学できるのが特徴だ。

 この醸造所では、ソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールなど年間6万~8万本のワインを製造しており、製造部長の内方知春さん(54)によると、最近はブドウの確保に苦労しているという。ブドウ生産者の高齢化やワイナリーの新規開業などが背景にあるが、内方さんは「新しいワイナリーができるのはうれしい。安曇野にお客さんが来てくれるワイナリーツアーができるといい」と話す。

 長野で楽しくワインを飲むなら、映画や小説の舞台になる軽井沢ほどおしゃれな街ではないかもしれないが、塩尻、安曇野がおすすめだ。 (金森篤史)

 ▼ガイド ワイナリー巡りの拠点となるJR塩尻駅、松本駅へは中央線・特急しなのが便利。丘の上幸西ワイナリー(電)090(1760)0061。ドメーヌ・スリエ(電)0263(31)0266。スイス村ワイナリー(電)0263(73)5532

(中日新聞夕刊 2019年10月3日掲載)