ジャンル・エリア : 展示 | 工芸品 | 石川 2020年02月14日
県九谷焼美術館 あらゆる技法 高レベル
明治-大正時代に生きた江沼郡大聖寺(現加賀市大聖寺)の九谷焼職人、谷口駒吉(1873~1925年)に光を当てる特別展「知られざる近代九谷の名工 谷口駒吉」が、同市大聖寺地方町の県九谷焼美術館で開かれている。名をはせる前に世を去った無名の陶画工の卓越した技術力を、厳選した132点の作品で紹介している。3月29日まで。(小室亜希子)
駒吉は江沼郡三谷村直下(そそり)(現加賀市直下町)で生まれ、10歳で京都に出て京焼の陶工永楽和全(えいらくわぜん)の弟子になった。九谷焼の赤絵師西野梅景(ばいけい)に陶画を習い、29歳で大聖寺に上絵付け用の錦窯を築いて独立した。大聖寺随一の陶商お抱えの画工になった。52歳で亡くなるまで、赤絵細描、大聖寺伊万里、柿右衛門、中国写しなど、あらゆるジャンルの作品を制作した。
当時は何100人もの九谷焼職人がおり、駒吉もその一人にすぎなかった。駒吉の子孫が300点以上の遺作を一括して保管しており、今回の特別展が実現した。下絵と下描きのための型紙、子孫からの聞き取りをもとにまとめた年表なども紹介し、駒吉の仕事や人となりに迫っている。
10年前から駒吉を研究する中越康介学芸員は「ありとあらゆる技法を高いレベルでマスターしている」と指摘。展示ではあえて作品にキャプションを付けず、全体を概観して駒吉の多芸多才ぶりを感じられるよう工夫されている。
中越学芸員は「歴史に名が残るのは幸運な一握りの人にすぎない。駒吉を通して、多くの無名の職人がこの地域の九谷焼を支えていたことを知ってほしい」と話す。駒吉の作品362点を収録した図録を近く発刊する。午前9時~午後5時。月曜休館(祝日は開館)。
◇記念講演会は次の通り(いずれも午後1時半~3時、申し込み不要)
2月15日 孫の奥出清江さん「祖父・谷口駒吉のこと」
2月29日 九谷焼作家河島洋さん「谷口駒吉の技術力」