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【岐阜】ねっとり系の焼き芋、常滑焼のつぼで 大垣の幸神

ジャンル・エリア : グルメ | 岐阜 | 野菜  2020年03月03日

つぼの内部の温度は200度。芋を熱源と離して蒸し焼きにするため、水分が飛んだり、皮の近くが焦げたりしない

つぼの内部の温度は200度。芋を熱源と離して蒸し焼きにするため、水分が飛んだり、皮の近くが焦げたりしない

 大垣市墨俣町に、常滑焼(愛知県常滑市)のつぼを使った焼き芋店がある。その名も「つぼ焼いも 岐阜総本舗 幸神(こうしん)」。独特の「ねっとり系」の食感と甘みが特徴で、口コミで人気が広がり、週末には行列ができるほどに。店主の古澤登さん(45)は「おいしい焼き芋を食べて、笑顔になってもらえれば」と、きょうも1本1本を丁寧に焼き上げる。

 墨俣一夜城に近い県道岐阜垂井線沿い。コテージ風の店の前に茶色い大型のつぼが並ぶ。それらには「つぼ焼いもに本気で情熱注いでます」「良い炭と情熱だけで焼いてます」の文字。ふたを開けると、縁に沿ってぐるりとつるされた芋が10本。真下で炭が真っ赤に燃えている。

 古澤さんが焼き芋店を始めたきっかけは、キッチンカーのイベントを企画していた4年前のこと。軽トラックで焼き芋を売る男性と出会い、「あれこれ手を加えなくてもおいしく、若者からお年寄りまで人気がある。体にもいい。自分もやりたい」と思った。

「常滑焼のつぼで焼いたおいしい焼き芋を食べて、笑顔になってほしい」と話す店主の古澤さん=大垣市墨俣町で

「常滑焼のつぼで焼いたおいしい焼き芋を食べて、笑顔になってほしい」と話す店主の古澤さん=大垣市墨俣町で

 「最も適した焼き方は?」とインターネットを検索していた時、常滑焼のつぼで焼いた焼き芋の記事が目に入った。調べると、常滑焼職人で常滑市無形文化財保持者の前川賢吾さん(72)がただ一人、手掛けていることが分かった。

 窯元を訪れると、前川さんは人の腕ほどの太さの粘土を積み上げる「ヨリコ造り」と呼ばれる伝統的な技法で、一つ一つを手づくりしていた。その後も何度も通って芋をうまく焼くコツなどを教わり、昨年10月の開店に合わせ、高さ75センチ、直径60センチの焼き締めのつぼ7つを特注した。

 つぼの中の温度は200度。頃合いを見て、芋をひっくり返しながら1時間半から2時間をかけて、じっくりと焼く。熱源と芋を離して蒸し焼きにするため、皮の近くが焦げたり、水分が飛んだりすることなく、うまみを十分に引き出すことができるという。

 サツマイモは、「時期によって一番いいものを選んでいる」と古澤さん。今は主に、収穫後に熟成させた茨城産の「紅はるか」と「シルクスイート」。評判は徐々に広がり、平日で一日200本、週末は350本ほどが売れている。

つぼ焼き芋のつぼを造る前川さん=愛知県常滑市で

つぼ焼き芋のつぼを造る前川さん=愛知県常滑市で

 店の外観や、ずらりと並んだつぼは、「インスタ映え」のスポットとしても人気。店の入り口に置かれた前川さん制作のお地蔵さん「賢吾」を、「ケンゴ~」と言いながら頭をなでていく女子高生もいる。

 古澤さんは「墨俣はかつて、大変にぎわっていたと伝え聞く。小さな焼き芋屋だけど、少しでも、にぎわいが戻るきっかけになれば」とも思っている。

 つぼ焼いもは、一本350円。今後は、焼き芋を使ったスイーツなども商品化する予定。水曜定休。(問)幸神=0584(76)3510

 (朝田憲祐)