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【愛知】独り占め 肉も炎も幸せも ソロキャンプ 愛知県犬山市

ジャンル・エリア : 愛知 | 自然  2021年05月20日

ポップアップ式テントなので、設営はとても簡単。放り投げれば、自らテントの形に膨らんでくれる=いずれも愛知県犬山市のアウトドア・ベース犬山キャンプ場で

ポップアップ式テントなので、設営はとても簡単。放り投げれば、自らテントの形に膨らんでくれる=いずれも愛知県犬山市のアウトドア・ベース犬山キャンプ場で

 4月、中日新聞を読んでいて、ああ、懐かしいなあと感じた記事が2つあった。名古屋市出身の作家、清水義範さんと、芸人のヒロシさんをそれぞれ取り上げた記事だ。清水さんはユーモア小説の大家で、はやりのCMや人間関係などのおかしな点を誇張して物語にした作品や、作家の文体を模倣した著作などが人気。若い頃、新刊が出るたびに買い、読んで笑ったものだ。一方のヒロシさんはソロキャンプ芸人として再ブレーク。彼の記事を読んで、久々にキャンプに行きたくなった。

「というわけで、独りでキャンプに行こうと思う」
「大丈夫なの?家族3人でよくキャンプをやってたのはもう10年以上前よ。体力だって落ちてるんじゃない?最近は運動もしないでしょ」

 妻は大根を切る手を止め、懸念を示した。50歳を超えたオジサンに、ソロキャンプは無理だと言うのだ。確かに運動不足から腹周りはぜい肉だらけ。毎朝、痛風と中性脂肪、高血圧の薬を飲む。驚くほど簡単に筋肉痛になる。心配はもっともだ。しかし、男が一度決めたのだ。やめられるわけがないではないか。
「いや、行くよ。絶対行く」
「でも、テントだってないじゃない」
「買えばいいじゃないか、ソロ用のを。あとタープも」

 反対しても無駄だと悟った妻は、静かに大根に戻った。

 かくて訪れたのは愛知県犬山市のアウトドア・ベース犬山キャンプ場だ。青空の下、アマゾンで購入したテントとタープを立てる。10年ぶりなので念のため昨日、近所の公園で練習したのが良かったようだ。途中でぜいぜい言い、何度も休憩したので2時間近くかかったが、無事完成した。やればできる男なのだ。

 少しいっぷくしたら火おこし。着火剤の上に細い木切れを置き、高火力のバーナーであぶると簡単に火が付いた。恐るべき文明の利器だ。炭を増やし、うちわであおぎ続けると、炭が赤く光った。

不思議なことに、火を見ていると気分が落ち着く

不思議なことに、火を見ていると気分が落ち着く

 うん、自宅でタレに漬けてきた牛肉、塩こしょうした鶏肉、野菜を焼こう。1人で食べるのは少し寂しいが、ビールがそれを流してくれる。日が暮れたら、まきをくべてたき火だ。ゆらゆら上がる炎を見ていると心地よい。あーもう、幸せだなあ、どうにでもしてくれという気分になる。

 テントでの目覚めは、肌寒いのがかえって気持ち良かった。久々のキャンプは大成功だ。ずっと独りなので新型コロナ感染の心配もない。さあ朝食を食べたら帰ろう。

 テントの片付けまでスムーズに終わり、あとはタープを畳むだけだ。ん? タープの脚4本のうち2本がうまく縮まらない。全然、動かない。近くで見ると、脚が曲がっていた。わわわわ、これは駄目だ。「設営は必ず2人以上で」との注意書きを無視して、1人で立てたから変な力が加わったのだろう。もう使えないかもしれない。毎月のランチ代を超える金額がたった一晩で消え、途方に暮れるのであった。 (金森篤史)

 ▼ガイド アウトドア・ベース犬山キャンプ場へは中央道・小牧東ICから車で15分。1泊の場合、入場料は1人900円、フリーサイト利用料は同500円、オートサイト利用料は1区画3500円。ほかに、宿泊テントサイトやバーベキュー、釣り堀、カモへの餌やりなどがある。(電)0568(61)6316

(中日新聞夕刊 2021年05月20日掲載)