ジャンル・エリア : グルメ | 愛知 | 海 | 特産 | 芸術 2021年06月17日
数々のアートが楽しめる佐久島(愛知県西尾市)に、最近中高年の来訪者が増えているという。一時は「インスタ映え」を狙った若者が殺到した島。健康診断の結果が気になるオジサン記者も、心身の健康づくりを兼ねて、のんびりと過ごす島巡りを体験してきた。
一色港から島の西港まで20分。自動販売機が少ない島では、お茶などの水分持参が必須だ。到着してまず向かったのは、島一番の観光スポット「おひるねハウス」。近くの「黒壁集落」をイメージした黒色の作品で、昼寝をするように寝そべってくつろぐこともできる。ここで岐阜市から来た夫婦に出会った。
夫(44)は「以前から来てみたかった。今日はのんびり過ごします」と話した。都会の喧噪(けんそう)から離れて、静かな島でリフレッシュするのだという。
「一号線」と呼ばれるメイン通りを東へ。柵に囲まれた場所で飼われている島のアイドルヤギ「ノンとビリー」の様子を見ながら、大浦海水浴場の一角にある「カモメの駐車場」へ。浜の突堤に、風によって向きを変えるかわいらしいカモメがずらり。風の弱いこの日はてんでばらばらの方角を向いていたのは残念だったが、波音を聞きながら眺めるアートは一興だ。
島では徒歩でもレンタサイクルでも散策が可能。あまり人が訪れないアート「星を想(おも)う場所」へ。高さ1メートルほどの円筒に「星のかけら」を貼り付けた作品。星のかけらは、浜に打ち上げられたごみだ。ガラスのかけら、自転車の反射板、電球などが一体になったアートを眺めると、浜に散乱したごみを思い出して心が痛くなる。
初夏の島では、大アサリ(ウチムラサキ)や岩ガキ、タコなどがおいしい。三河湾の海の幸を目指して店を訪ね歩くが、新型コロナ禍でほとんどの店が休業。どこも緊急事態宣言の解除後に、店を再開するという。島での食事はあきらめるしかなさそうだ。一色港へ戻って、一色うなぎ漁協が運営する「いっしき」で、うなぎ丼を堪能した。
アートの島はまた、ネコの島でもある。多くのノラネコが住民と共生し、2018年には動物写真家の岩合光昭さんが映画「ねことじいちゃん」を撮影したほど。しかし最近、ネコの写真を撮ろうと民家に立ち入る観光客がいるという。佐久島は約200人が住む生活の場でもある。コロナの感染防止はもちろん、マナーを守って散策することが欠かせない。(宇佐美尚)
▼ガイド 一色港までは、名鉄西尾駅からバスで30分、国道23号バイパス西尾東ICから車で30分。島には30以上のアート作品があり、島内の文化交流施設「弁天サロン」(月曜休み)では、観光案内も受けられる。佐久島ナビステーション(電)0563(72)9607。渡船代は往復1660円。
(中日新聞夕刊 2021年06月17日掲載)