ジャンル・エリア : まちおこし | グルメ | 静岡 2021年06月30日
食堂、製本、朝市が一緒になった複合施設「みかわや コトバコ」が浜松市中区尾張町にある。築53年の空き店舗を改修し、異業種が集う空間にした。管理人の大端将さん(35)=浜松市東区=は「空き家という資源を使って、やりたいことがある人の居場所を作っていきたい」と話す。 (高島碧)
建屋は、元はたばこや日用品を並べる商店。住居を兼ねていたが、2012年から空き家になっていた。鉄骨2階建てで、複合施設となる1階の広さは180平方メートル。その一角は製本業を営む女性に貸しており、その隣に並ぶテーブルや椅子は曜日ごとに喫茶店や食堂に変わる。週2日は店の外で農業の男性が地元産の野菜を販売。室内に仕切りは無く、人の交流が生まれやすい造りになっている。
改修のきっかけは2018年、大端さんが市主催の空き店舗の利活用を考える講座「リノベーションスクール@浜松」に参加したことだ。課題物件は今回改修した空き店舗の隣の倉庫だったが、同じ家主から空き店舗の活用を相談された。中心市街地に近い立地を気に入り、借りることにした。
すると、スクールの人脈を通じてそこで出店を希望する3人が集まった。20年に入って4人で改修作業が始まった。壁や天井の板を取り、あえて木組みを見えるようにして温かみを出した。「テーブルや家具はもらいものでそろえ、費用を抑えて古い物を生かした」と語る。
昨年8月に製本店、次いで食堂、喫茶店、朝市が開店。店名は元の商店の屋号「三河屋」を受け継ぎ、新たなコトが起こる場所にと「コトバコ」とした。金曜と土曜日に食堂を開く大村智子さん(52)は「総菜を買いに来たご近所の方が『ここの商店でノートを買った』と昔話をしてくれる。会話が生まれておもしろい」と話す。
今年に入り、大端さんの元に近くで出店したいと6社から相談があった。「近くの空き家を改修して拠点を増やし、街歩きをしてもらえる地域にしたい。人のつながりで、新たなアイデアが生まれる」