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【富山】鑑真 心眼の絶景 県美術館 東山魁夷の大作 北陸初公開

ジャンル・エリア : 富山 | 展示 | 芸術  2021年09月30日

日本の海を象徴的に描いた障壁画「濤声」

日本の海を象徴的に描いた障壁画「濤声」

 奈良時代に命を賭して中国から日本に渡った高僧・鑑真(688~763年)をしのび、日本画の巨匠、東山魁夷(1908~99年)が10年の歳月を費やして描いた奈良・唐招提寺御影堂の障壁画が、富山市木場町の県美術館で展示されている。北陸では初公開。11月7日まで。 (平井剛)

 鑑真の座像をまつった御影堂では普段、5室の障壁画を年に数日しか公開していない。御影堂が全面改修される機会を利用して、貴重な作品を多くの人に見てもらおうと今回の巡回展が企画され、北陸では富山でのみ開かれた。

 鑑真は日本への渡航に5度失敗し、6度目で来日した際には失明していた。1970(昭和45)年に唐招提寺から障壁画の制作を依頼された魁夷は、鑑真が見ることのできなかった日本の風景、さらには鑑真の故郷・揚州など中国各地をスケッチして回った。

鑑真の故郷の中国・揚州を描いた障壁画「揚州薫風」=いずれも富山市木場町の県美術館で

鑑真の故郷の中国・揚州を描いた障壁画「揚州薫風」=いずれも富山市木場町の県美術館で

 その集大成として完成したのが「山雲・濤声(とうせい)・揚州薫風・黄山暁雲・桂林月宵」の5部からなる全68面の障壁画。山雲と濤声は日本の山と海を象徴的に描いた日本画。一方、揚州薫風、黄山暁雲、桂林月宵は中国の景勝地をモチーフとし、魁夷が67歳にして初めて挑んだ水墨画だ。

 会場では障壁画が描かれたふすまと一緒に畳の間も設け、御影堂の造りを部分的に再現した。観覧に訪れた人たちは眼前に広がる大作にじっと目を凝らし、鑑真の遺徳をしのびながら、魁夷の筆力と色彩表現に魅せられていた。

 障壁画の制作過程を紹介したスケッチや下図、制作ノートも展示している。同館広報担当の川浦美乃さん(45)は「唐招提寺でもなかなか見られない貴重な作品なので、この機会を逃さないでほしい」と話した。

 水曜休館。観覧料は一般千五百円、大学生千円、高校生以下無料。平日先着五十人にポストカードを進呈している。(問)県美術館076(431)2711