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【滋賀】明治生まれ遺志継ぎ120年 江北図書館 滋賀県長浜市

ジャンル・エリア : グルメ | 歴史 | 神社・仏閣 | 近畿  2022年04月21日

来館者に蔵書の魅力を語る久保寺容子館長

来館者に蔵書の魅力を語る久保寺容子館長

 米原駅から北陸線の各停で7つ目の木ノ本駅(滋賀県長浜市)。駅前のロータリーを渡るとすぐ、木造2階建ての建物がある。古いけれども、味わいの深い外観だ。これが今日の目的地、江北(こほく)図書館。

 明治時代、この地方出身の弁護士・杉野文彌(ぶんや)が、苦学をした体験から郷里の人に本を読める場所を提供しようと、「杉野文庫」を設立した。

 以後は名前や場所、規模を変えながら、今年で誕生から120年となる。滋賀県では最古、全国でもまれな歴史を刻んできた私立の図書館だ。

 玄関で靴をスリッパに履き替えたら、館長の久保寺容子さんの案内で、館内を巡る。建物と同じで、一見して古い本が多い。新刊を買う予算が乏しいと聞き、胸が痛む。

 だが戦前から戦後にかけて刊行された貴重な本が並び、壮観だ。昭和の子どもだった私も熟読した探偵ものなどもそろっている。自分の通った小学校の図書館にまた帰って来たようで、懐かしい。古い本も捨てず、大切にしてきた歩みを感じられる閲覧室で、読書をゆっくり楽しみたい。

満開の桜の下で開かれた古本市「いろはにほん箱」と江北図書館=いずれも滋賀県長浜市木之本町で

満開の桜の下で開かれた古本市「いろはにほん箱」と江北図書館=いずれも滋賀県長浜市木之本町で

 この日は折よく、図書館の駐車場で、古本市「いろはにほん箱」が開かれた。満開の桜の下、古書や雑貨など思い思いの品ぞろえの店が並ぶ。何か掘り出し物はあるかな。

 そこへ「つるやパンさんが今日のために、特製のパンを持ってきてくれました!」と久保寺さん。たくあんを刻みマヨネーズであえて、コッペパンに入れた「サラダパン」で人気の、地元の有名店だ。

 揚げたパンにウインナーを入れた「江北ウインナー」。バナナとチョコクリーム入り「江北チョコバナナ」。1つずつ買う。どちらもこの日の限定品といい、1つ200円。いい日に来られたなあ。

 図書館と古書市を見たら、木之本地蔵院にお参りする。日本三大地蔵の1つとされ、図書館から歩いて5分ほど。目の病気に御利益がある、とされる。読書で疲れた目には何ともありがたい。合掌。

 最後に、創業480年の歴史を持つ冨田酒造へ行く。江北図書館を長く支えてきた篤志家一族の蔵元だ。今では珍しくなった木おけで醸したお酒「木ノ環(きのわ)」を買い求めて帰ろう。ああ、楽しかった。

 ◇ 

 この春「旅レシピ」担当となった。長引くコロナ禍の中「人混みはいや」と思う方も楽しめる旅程を紹介したい。その初回として江北図書館と木之本のまちをお伝えした。ぜひお出かけを。 (三品信)

 ▼ガイド 江北図書館はJR北陸線木ノ本駅からすぐ。滋賀県長浜市木之本町木之本1362。開館は火曜~土曜の前10時~後4時、第2・第4・第5日曜の前10時~後2時。休館日は毎週月曜、第1・第3日曜、祝日、年末・年始(12月29日~1月4日)お盆(8月13日~15日)。入館無料。(電)0749(82)4867

(中日新聞夕刊 2022年4月21日掲載)