2010年09月30日
タイ政府はバンコクと15県に発令されていた非常事態宣言を10月初旬まで延長した。タクシン元首相派団体の反政府活動に関連した治安上の懸念が残るとの理由だが、「延長は本当に必要なのか」と疑問に思う。
バンコクは平静を取り戻している。6月下旬、連立与党第2党の本部を狙った爆弾事件が起きたがタクシン派とみられる容疑者2人はすでに拘束された。周囲のタイ人たちも日常生活に治安上の不安は感じていない。
タイの非常事態宣言下では、5人以上の集会の禁止やメディアの検閲、閉鎖が可能。さらに、治安当局は容疑者を起訴せずに30日まで拘束することが可能で、国民の集会や表現の自由、人権を大幅に制限できる規定になっている。
アピシット首相は国民和解を進めるとしているが、宣言を発令したままでは、タクシン派でなくとも左手にナイフを持ち、右手で握手を求めているように見えるのではないか。 (古田秀陽)