2012年07月05日
警察官に連行される容疑者。カメラのフラッシュが一斉にたかれた。容疑者が通り過ぎても、まだフラッシュが。カメラはこっちを向いていた。
南米チリの首都サンティアゴで日本人が殺害された事件。犯人が逮捕された瞬間から、地元メディアの興味の対象は、事件を取材するためにはるばる遠くからやってきた日本人記者に移った。
デスクと電話している姿、日本人記者同士で話をしている様子など、気が付くとカメラはこちらを狙っている。法廷では、地元メディアに頼まれたとみられる警備員までもが、私たちの様子を撮影する始末。
連絡先を教えると、取材攻勢が始まった。毎日電話で「今日は何をする?」と聞かれた。「その計画を喫茶店で練っているところだ」と言うと、カメラマンがわざわざやってきて、その様子を撮影していった。
会ったこともない女性記者が電話をしてきたこともあった。翌日、紙面に私の写真と記事が掲載された。
「日本人記者も恐れるチリの治安」との見出しで、およそ話したこととは違うことが書かれ、少々不満だった。抗議の電話でもしてやろうかと、ホテルの外へ出たら、前日乗ったタクシーの運転手が、新聞を見せながら「大丈夫か」と一言。抗議をする気持ちもうせた。 (長田弘己)