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イスタンブール 母国の「未来」は遠く

2016年09月15日

 シリア難民の若者グループが内戦終結後に母国を再建するための活動を続けている。将来の青写真を描くスピーチ大会や子どもに夢を語ってもらう催しなどをトルコで開催している。

 グループを主宰する若者たちに、トルコの最大都市イスタンブールで会った。その1人ナセルさん(24)は「未来の母国を、教育水準が高く自由な国にしたい」と話してくれた。

 シリア内戦では、イスラム教シーア派系のアサド政権とスンニ派の多い反体制派などが争っている。グループの主宰者はスンニ派の若者たち。ナセルさんは「活動に政治を持ち込みたくない」と言いつつ「われわれの目標を邪魔しているのは、アサド政権だ」とも強調した。

 一方、アサド政権の支持者の視点に立てば、反体制派こそ彼らの目標を邪魔しているように映るはずだ。ナセルさんの言葉に、シリア国民の間に生じた断絶の深さを思った。

 5年に及ぶシリア内戦の死者は、25万人以上。たとえ内戦が終わっても、多くの命を奪われた人々の憎しみは残る。シリアに「未来」がやってくるのは、いつになるのだろう。(中村禎一郎)