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イスラマバード 教育を奪われる悲劇

2011年07月10日

 国際テロ組織のリーダー、ウサマ・ビンラディン容疑者殺害の取材で訪れたパキスタン・イスラマバードで、反政府武装勢力タリバンに「人生をめちゃくちゃにされた」という男性ハマユンさん(30)に会った。

 4年前、ハマユンさんは同国北西部スワトで、学校経営に乗り出した。英語教育に力を入れ、男女共学だったが、「学校を吹き飛ばすぞ」という脅迫電話がくるようになった。「彼らはアメリカ的なものの考え方を教えていると怒っていたが、そんなことは教えていなかった。女子教育にも怒っていた」

 翌年2月、親類の警察幹部が爆弾テロで殺害され、その葬儀会場でも自爆テロで96人が死亡する大惨事が。攻撃はその後も続き、ハマユンさんの父が乗った車が銃撃された。命は助かったが、その年の6月には学校が破壊された。

 一家は追い詰められ、土地や車を二束三文で売ってイスラマバードに来たが、銀行で全財産を引き出したところ、つけてきた男たちに銃で脅され奪われた。

 なぜタリバンは自国民を苦しめるのか。彼は目に涙を浮かべて答えた。「タリバンは子供や若者に軍と戦うことがジハード(聖戦)だと教え、軍に協力する人々も敵だと信じ込ませる。コーラン(聖典)にそんな教えはないのに…。教育のない悲劇だ」(杉谷剛)