2013年04月01日
豚肉や鶏肉の気分ではない時、羊肉の串焼き「ヤンコチ」を食べに行く。テーブルに炭と焼き台が運ばれ、焼き鳥のように串を回しながら焼く。目の前で立ち上る肉の焼ける香り、脂が炭火にはじける音が食欲をかきたてる。
中国東北部でよく食べられる料理で、主人や従業員もそこから来た朝鮮族のことが多い。店では発音が違う韓国語が飛び交い、異国情緒も楽しめる。
締めは透明感のあるトウモロコシの麺で、脂まみれの口をさっぱりさせる。冷麺より柔らかく、そうめんより歯応えがあり、のど越しさわやかだ。
先日、ヤンコチ店で一緒に食事をした脱北者男性は韓国語の「オクスス・ククス(トウモロコシの汁麺)」ではなく「カンネンイ(北朝鮮の言葉でトウモロコシ)・ククス」と注文した。
北朝鮮で米の栽培が難しい地域は、トウモロコシが主食。「北朝鮮のカンネンイ・ククスは小麦粉のつなぎが足りないからぶつぶつと切れた。そうしたものでも、毎日ありつけるわけではない」と、男性は麺をすすりながら話した。
北朝鮮は昨年12月に事実上の長距離弾道ミサイルを発射。2月には核実験を強行した。核・ミサイルの開発費をカンネンイ・ククスに換算すると、一体どれぐらいになるのだろうか。
(篠ケ瀬祐司)