2014年09月30日
モスクワ生活での関心の対象の1つに、北朝鮮料理店がある。店員は北朝鮮出身の20代女性を中心に10人ほど。週末の夜には、店員自身が赤いチマ・チョゴリを身に着け、北朝鮮の歌を披露するショーがある。
芸を学んだ場所を問うと「平壌の学校で」と上手なロシア語で返してくる。「喜び組」を輩出する学校なのかと質問すると、ニコッとするだけで細かくは語らない。女性が隅の席にちらっと目をやるので見てみると、50前後の男性が一人で壁に向かって座り、やりとりを監視している様子だった。
質問に対する彼女らの答えは、想定問答集があるように画一的だ。彼女らを写そうとするとにらまれる。それでも、何度か通って世間話をしているうち、彼女らが外貨稼ぎのため派遣され、モスクワの北朝鮮大使館内の寮に住み、メールは禁止で、休日の自由行動もない生活を送っていることがうかがえた。
知り合った北朝鮮大使館員らとこの料理店にいると、彼女らの「自然な笑顔(?)」はいつも消える。そこは、おそらくは日本で出会うこともなかろう、かの国の人々と触れる貴重な場になっている。(原誠司)