2009年07月02日
山東省済南市の空港出口で「ライター売りのおばあさん」に遭遇した。農民風のお年寄りが両手に10個ほど握り締め「ライターはいらんかね」と声を掛けてきた。
売値は1個1元(約14円)。中国では昨年から、テロ対策で機内へのライター持ち込みが禁止に。搭乗時にライターを没収された喫煙家向けの新商法という。
ただ、農村の市場で仕入れた古ぼけたライターを買う人は少ない。「1日で売れるのは2、3個。月収は30元(約420円)かねえ」。30元?北京の工事現場で働く低賃金の出稼ぎ農民の「日給」分だ。
「ほかに仕事もない。仕方ない」。思わず「田畑は無いの?」と尋ねると、地面を指さし「空港建設に取り上げられた。補償金も残ってない」。おばあさんは力のない笑いを浮かべ、次の客へ向かった。ライターに火を付けると、細い炎がともった。
(平岩勇司)