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ソウル 目背ける?断絶映画

2011年06月11日

 ソウル市内の小さな映画館で、中・韓・仏合作の「豆満江」という作品を見た。中国朝鮮族出身の張律監督による映画で、豆満江は中国と北朝鮮の国境沿いに流れる大河だ。

 その川沿いにある朝鮮族の小さな村で、主人公の12歳になるチャンホは祖父と姉の3人で暮らしている。父は亡くなり、母は韓国に出稼ぎに行って長くなった。

 豆満江は冬になると凍結するため、北朝鮮から川を歩いて渡って来る脱北者が後を絶たない。チャンホは脱北者ではないが川を頻繁に渡ってくる少年と仲良くなる。

 飢えに苦しむ脱北者は村の家畜を襲ったり村人が冬の食料として用意した貴重なタラを盗むなどし、村人の反感は募る。チャンホの姉は祖父がかくまった脱北者の男に乱暴されチャンホと少年との友情にも亀裂が入る。

 経済難にあえぐ北朝鮮の人々が中国の少数民族である朝鮮族の村人に迷惑をかけ、心に傷を残す重い内容。韓国と北朝鮮、中国の朝鮮族はもともとは同じ民族だ。しかし、38度線が南北を、国境が北朝鮮の人と中国の朝鮮族を隔てる。

 ところで、劇場には私以外に1組の男女だけだった。同僚が先に観賞した時は他の観客はいなかったとか。韓国の人々に、もっと見てもらいたい作品、と思うのだが…。(城内康伸)