2014年02月18日
シャッターが不自然に切り取られていた。米ニューヨーク・マンハッタンのヘルズ・キッチン地区にあるストリップ・バーの前には、こわもての警備員が立っていた。
10月の1カ月間、著名な英国人の謎の路上画家「バンクシー」が市内各地で、創作活動を展開し、街を騒がせた。
この店のシャッターにも、花束を持ってたたずむ男性の姿をスプレーペイントで描いた作品が書かれたことを突き止め、たどり着いたところだった。
「作品はどうしたの」と聞くと、警備員は「店内で飾るらしいよ。価値があるんだろ?」と目を細めた。
集客に役立てようと、早々に切り取ってしまったらしい。
ブルックリンのある貧困地区にもバンクシーは作品を残した。治安の面から普段は訪れない外からの客が、大挙して押し寄せた。
すると、地元の男性が、「見学料20ドル」とふっかけ、批判の対象になった。
クイーンズでは、高速道路沿いの建物に、風船を使った作品が取り付けられたが、男2人が盗もうとしているところを、現行犯逮捕された。作品は警察に押収された。
残りの作品も破壊されたり、高額で取引されたり。路上アートの魅力は、はかなさだとあらためて感じた1カ月だった。
(長田弘己)