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韓国・漣川郡 71年 なおにらみ合い

2024年01月22日

南北軍事境界線に最も近い展望台「台風展望台」の入り口

南北軍事境界線に最も近い展望台「台風展望台」の入り口

 「北朝鮮の侵入を見つければ警告射撃できます。今は緊張状態でないのでしませんが」。韓国北部・漣川(ヨンチョン)郡の「台風展望台」は南北軍事境界線まで800メートルの位置にあり、「北朝鮮に最も近い展望台」と呼ばれる。駐在する軍人は、穏やかでないことをさらりと言ってのけた。

 一部を除き写真撮影がほぼ禁止される展望台は、休戦状態にある北朝鮮と向き合う最前線の一つ。臨津江(イムジンガン)を挟み肉眼で望める北朝鮮からは、韓国側まで侵入して魚釣りにくる軍人がたまにいるという。漣川では10年前、韓国市民団体による北朝鮮批判ビラ散布をきっかけに、南北双方が警告射撃を行った。住民に被害こそなかったが、3時間以上の避難を強いられた。展望台近くの郡施設には、その経緯を記した看板が掲げられている。

 展望台見学後、カフェや図書室が併設されたこじゃれた食堂に寄り、「前線」にいることをしばし忘れた。ただ、隣に座った大学教授によると「整備が進んだのはこの20~30年。その前は事件の絶えない危険地域」だったそうだ。朝鮮戦争休戦から71年。戦禍の根深さを改めて肌身で感じた。(上野実輝彦、写真も)