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北京 姿は見えぬ美声の主

2009年07月10日

 早朝の散歩中、小鳥の鳴き声に誘われた。その先に、好々爺(や)とおぼしき人たちと、木の枝にぶら下げられたいくつかの鳥かご。どれも白い布がかぶせられている。

 「年寄りの朝の楽しみは、友達とのおしゃべりと、これさ」と、一人が鳥かごを指さした。「人間だって、家に閉じこもっていたらストレスがたまるだろ。だから、この子も連れて来るのさ」

 鳥たちによる朝のソプラノのコーラスは、耳に心地よい。あとは北京の空気が澄んでいたら…というのはぜいたくな注文か。

 布はかぶせられたままで、鳥の姿は見えない。「外して」と頼んだが、「鳥が機嫌を悪くして鳴かなくなる。それにこの季節はまだ寒い。風邪をひいてしまう」と断られた。

 「5月なら?」と食い下がると「そのころはもう暑い。日よけが要る」ときた。どこまでももったいぶるつもりらしい。鳴き声の主にお目にかかれるのは、いつの日になることやら。

 (朝田憲祐)

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