2011年03月24日
当地でガレージセールと並び人気なのがエステートセール(遺産処分セール)。人が亡くなった後に行われるもので、週末の新聞の広告欄に住所が出る。いくつか回ってみた。
高級住宅街のセールともなれば、入場制限されるほど人が並ぶ。故人が大切に集めたコレクションなどが廉価で手に入るからだ。
家は奥まで開放され、各部屋の調度品は日頃の状態のままで値札が付けられる。車や家が売りに出されることもある。古物商が雇われて取り仕切ることが多く、家族の顔を見ることはあまりない。
その家にこれほど人が入ったことはないだろうと思うほど人が入る。大して袖を通していない毛皮のコートが自分の体に合うかどうか試す人。置き時計を品定めする人。まるでバーゲン会場だ。
品々を見ていると、いろいろなことが想像されて興味深い。故人が船乗りだったらしいとか、土産品から察して大戦後の進駐軍として日本にいたらしいことなどが分かる。女性は衣装が多いので体形や好みまで分かる。
高齢者用歩行器も残る家の中は故人の息づかいが残るようだ。机の上の額縁に、家族で撮った写真が入ったまま値が付いていた。でもわれに返ると、そこは“バーゲン会場”として沸いている。故人が天から見ていると思うと奇妙な気分になる。 (岡田幹夫)