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北京 カラスがいない理由

2013年06月13日

 北京で暮らしていると、何とも不思議なことがよくある。

 その1つがカラスを全く見かけないことだ。市内には生ごみが散乱している場所も多い。格好のえさ場なのに、日本の大都市のような光景はない。

 日本留学の経験がある中国人に聞いてみても首をかしげるだけ。「名古屋に住んで、大きなカラスがたくさんいるのに驚いた。どうしてなの?」と逆に質問された上、「迷答」を出してくれた。

 「北京から胡同(フートン=細い路地)が消え、高層ビルばかりになったため」「大気汚染がひどくなり、カラスが日本に渡ってしまった」。どれも珍説に思える。

 調べてみると、意外な説が。毛沢東主席が主導した「大躍進」運動の結果というのだ。1958~60年の運動は、穀物や鉄鋼などの生産を短期間に倍増させることを目指したが、強引な政策は悲しい結末を招く。

 穀物を食い荒らすカラスはまさに天敵。共産党の呼び掛けもあり、農民たちは片っ端からカラスを殺した。この時期を境に中国の空から黒い鳥の姿は消え、生態サイクルを壊してしまった。

 最も悲惨だったのは田畑が荒れ果て、4000万人といわれる餓死者を出したことだ。環境破壊が深刻化する一方の中国の人々にとり、忘れてはならない歴史だろう。 (白石徹)

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