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ワシントン 小さなバッジの効果

2013年10月07日

 見知らぬ人から、やたら話し掛けられた1週間だった。米国で人種差別の撤廃を訴えたワシントン大行進から50周年の8月末、復刻された当時のバッジを左胸に着けていた。

 黒い手と白い手が握手する絵の周囲に「ワシントン大行進 雇用と自由に向け 1963年8月28日」の文字。公民権運動の黒人指導者マーチン・ルーサー・キング牧師が「私には夢がある」と演説した時も左胸に光っていた。

 エレベーターや地下鉄で「どこで買ったの?」と聞かれる。博物館になっているアトランタのキング牧師の生家と答えると「いかすね」。キング牧師記念碑の前で取材した黒人女性もバッジを見て表情を和らげてくれた。

 ある午後、路上で白人男性から「後ろを見てみな」と声をかけられた。振り向くと、公民権運動の黒人指導者ジェシー・ジャクソン師(71)がビルから出てきた。60年代後半のキング牧師の側近、80年代には民主党の大統領候補に名乗りを上げた大物だ。気後れしながら記念写真をお願いすると、笑顔で肩に手を回してくれた。

 50年前、25万人が行進した米国の首都を、同じバッジを着けて歩く。まんざらでもない気分なのに、特定の外国籍住民への排斥運動が物議を醸している極東の島国のことがずっと頭から離れなかった。 (竹内洋一)

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