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バルセロナ 物乞いに心が痛んだ

2014年05月11日

 不景気を反映してか、物乞いが多い。

 財政再建中のスペイン。美しい地中海沿岸のバルセロナを旅したこの冬、街で慈悲を求める人に何度も遭遇した。

 地元の買い物客や観光客らでにぎわうサン・ジュセップ市場を訪れると、ダウン症とみられる成人男性が目に入った。

 手当たり次第に通行人に声を掛けていた。そばを通る。地元の言葉は分からないが、お金をねだっていたのは間違いなかった。

 一緒に旅していた13歳の息子も同じ知的障害がある。「親亡き後」の心配は尽きないが、ダウン症の人々は得てして、穏やかでユニークな人柄。独特の外見もあって、世間に風変わりな見方もされるが、汚れのない魂に心を癒やされる。

 それだけに市場では胸が痛んだ。男性の家計はさておき、その行為を誰が教えたのか。いや、見よう見まねで覚えたのか。

 ロンドンの自宅に戻って養護教諭の知人に話すと、「家庭に問題がある場合が多い」とか。気持ちの持って行き場がなかった。

 (小杉敏之)