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バルセロナ 手荒すぎるスリ集団

2019年11月28日

 「あなたの不注意をいつも狙っています。持ち物には気をつけてください」

 8月中旬、バルセロナの地下鉄で突然、日本語を耳にした。スリへの注意を呼び掛ける車内放送だ。ちょっと驚いた後、考えた。「やはり、注意が足らなかったのか」と。

 空港に着いて、最寄り駅から家族と一緒に電車に乗ると、スリ被害にあった。混んだ車内で、中年女性と初老の男性に腕をつかまれた。電車が揺れるためかと思ったが、不審に感じていったん振りほどいた。だが、電車が最初の駅に着くと、再び同じ状況になった。

 ドアが開くと、男性は身ぶり手ぶりで「降りよう」と誘ってくる。さらに乗客数人が男性に加勢し、私の体を押してきた。スーツケースの位置を足で確かめつつ拒んでいると、男性ら5、6人は急に下車。私の上着のファスナー付きポケットやかばんから財布などが消えていた。

 地下鉄の車内放送の後、留め具などで財布をかばん内側に固定していれば、などと反省した。思い浮かんだ最大の不注意といえば、ここまで手荒なスリ集団に考えが至らなかったことだった。 (藤沢有哉)