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ニューヨーク 政策よりパッション

2016年07月27日

 米大統領選の候補者の演説会場で取材すると、支持者らの熱気にいつも圧倒される。

 ヒラリー・クリントン前国務長官(68)が民主党候補の指名を確実にして勝利宣言した7日のニューヨークの集会でも、演説前のバンド演奏に合わせて大歓声を上げた。開始時間が迫ると「ヒラリー」と連呼し、主人公の登壇を促す。日本の演説会場とはまるで違う雰囲気だ。

 演説中も、格差解消などクリントン氏が得意とするフレーズを発すると、米国旗を振って応える。逆に、ライバルに言及するとブーイングが巻き起こる。候補者と支持者が一体となったエンターテインメント色が極めて強い。

 ほかの候補にも共通するが、政策の具体性には乏しく、何を基準に支持しているのか分かりにくい。細かいことにはあまりこだわらない国民性を反映しているのだろう。

 大統領が、広大な国土の隅々まで目を行き届かせるのは不可能だ。それより「こんな国にしたい」と大きな方向性を打ち出し、熱狂的支持を獲得する方が米国には合っていると思う。米国が世界で放つエネルギーの源かもしれない。 (東條仁史)