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檜原湖

檜原湖 福島県北塩原村 繊細な釣り 暖房で快適

氷結する前の檜原湖。あいにく磐梯山は雨雲に覆われていた

氷結する前の檜原湖。あいにく磐梯山は雨雲に覆われていた

 さお先に全神経を集中させ、じっと待つ。わずかにさお先が揺れ、糸を巻き上げると、水面に小さな魚体が躍った。冬の釣りで代表的なワカサギ。至福の瞬間を求めて、福島県北塩原村の檜原湖(ひばらこ)を訪れた。

 湖は毎年1月下旬にもなると氷で覆われるため、穴釣りが主流となる。しかし、訪れた12月中旬はまだ早く、船底の穴から直接釣りができるドーム船に乗った。ストーブがあり、上着不要の暖かさだ。

 さっそく、貸しざおで挑戦した。「まめな餌交換が大切。さお先の微妙な当たりを取るために神経を集中して」。ドーム船を経営するゴールドハウス目黒の目黒善一社長(61)がコツを教えてくれた。

 餌はサシ虫と呼ばれるハエの幼虫。ワカサギの口の大きさに合わせて半分にカットし、針につける。あとは、深さ約13メートルの湖底に仕掛けを落とし、時々、さおを小刻みに揺らす「誘い」を入れながら、魚が食いつくのをじっと待つだけだ。

ワカサギ釣りのドーム船内で、さお先に集中する釣り客ら

ワカサギ釣りのドーム船内で、さお先に集中する釣り客ら

 ワカサギは餌をくわえてもすぐに放してしまう。その一瞬を逃さず針掛かりさせる繊細な釣りだ。初めは仲間同士でにぎやかだった他の釣り客も、やがて口数が少なくなった。10数センチの小さな魚だが、針に掛かると魚の感触が手にしっかり伝わってくる。この快感に病みつきになった。

 檜原湖が位置するのは、日本百名山・磐梯山の北側に広がる裏磐梯と呼ばれる地域。夏はカヌーやハイキング、、冬はスキーなど一年中にぎわう高原リゾートだが、歴史は新しい。1888(明治21)年、磐梯山が噴火を起こし、岩なだれが川をせき止め、数百もの湖沼をつくった。その中で最大のものが檜原湖だ。

 「噴火からまだ130年しかたっていないんですが」と目黒社長。一帯は噴火で荒れ地となったが、植樹によって緑を取り戻した。檜原湖でも毎年、ワカサギの稚魚2億~3億匹を放流している。噴火で約500人が犠牲となったこの地の人々の努力なくして今の裏磐梯はない。

釣り上げたワカサギを調理してもらうこともできる=いずれも福島県北塩原村の檜原湖で

釣り上げたワカサギを調理してもらうこともできる=いずれも福島県北塩原村の檜原湖で

 釣りたてのワカサギをフライにしてもらった。ふわっとして苦味がなく甘い。恵みをもたらす会津の名峰に感謝し、ゆっくりと味わった。

 2011年3月の福島第一原発事故の影響は約90キロ離れた檜原湖にも及んだ。事故直後、ワカサギから国の基準値を上回る放射性セシウムが検出された。しかし、それ以降数値は下がり、基準値以下のままだ。

 檜原湖へは首都圏から日帰りも可能だが、1泊して冬の東北を楽しむのもいい。車で約1時間の同県会津若松市。蒔絵(まきえ)を体験できる会津漆器の老舗・鈴善(すずぜん)漆器店に立ち寄った。

 樹脂塗料で器に好きな絵を描き、色とりどりの粉を振る。余分な粉を除くと絵柄が浮かび上がり完成だ。不慣れで悪戦苦闘していると伝統工芸士の中村光彩(こうさい)さん(64)がアドバイスしてくれた。奥深さに何時間も熱中する人がいるそうだが、「喜んでもらえればそれに越したことはない」と笑顔が優しい。

 出来栄えはいまひとつだったが、オンリーワンの器に満足した。持ち帰ったワカサギを盛り付ければ、格別の味わいだろう。

 文・写真 冨江直樹

(2019年1月11日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
檜原湖へは東北新幹線・郡山駅でJR磐越西線に乗り換え猪苗代駅へ。
さらにバスで約40分。
車は東北道、磐越道を経て猪苗代磐梯高原ICで降り、国道459号へ。

◆問い合わせ
裏磐梯観光協会=電0241(32)2349

おすすめ

蒔絵体験教室

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大吟醸入りシフォンケーキ

大吟醸入りシフォンケーキ

★ワカサギ釣り
檜原湖畔のゴールドハウス目黒では、初心者向け体験コース(さおのレンタル料、漁業券込み)は大人1日6500円、半日5000円。
ドーム船は合計150人収容、トイレ完備。
電0241(32)2523

★会津漆器
400年以上の歴史がある。
鈴善漆器店では蒔絵体験教室があり、予約制で1600円から。
所要時間は約1時間。
電0242(22)0680

★末廣(すえひろ)酒造
歴史ある酒蔵が印象的な会津若松市内の蔵元。
試飲コーナーがあるほか、蔵を改装したカフェでは、仕込み水でいれたコーヒーや大吟醸入りシフォンケーキが味わえる。
電0242(27)0002

★東山温泉
約1300年前に僧の行基が発見したとされ、会津若松市内から車で約10分。
「庄助の宿 瀧(たき)の湯」は、滝を眺めながらの露天風呂が心地よい。
電0242(29)1000

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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