2009年09月04日
世界保健機関(WHO)の総会に1971年の国連脱退以来、38年ぶりにオブザーバー参加した台湾。代表団を率いたのは葉金川衛生署長(衛生相)。実はこの人、台湾行政院(内閣)で最も人気が高い閣僚だ。
新型肺炎(SARS)が流行した2003年。WHOからの関連情報の遅れで感染が拡大する中、医師でもある葉署長は、院内感染が蔓延(まんえん)した病院にいち早く飛び込み、対策に奔走した。
総会参加で新たな歴史をしるした葉署長だが、ジュネーブでは、「中華民国」や「台湾」ではなく、「中華台北」名の参加に対し、台湾人留学生から「主権の矮小(わいしょう)化だ」「台湾を愛していない」と抗議を受けた。
興奮のあまり、留学生に「恥知らず」と叫んだ葉署長。その後、SARSの経験に触れ「私こそ台湾を愛している」と涙ながらに語った。命や健康を語り合う場で、台湾人同士がののしり合うのがやり切れなかった。 (栗田秀之)