2012年10月02日
携帯電話の画面に見知らぬ番号が3度続けて表示された。中国西部、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチから西南部のホータンに着いて間もなくのこと。電話に出ないでいると、今度はホテルからかかってきた。
チェックインの際、旅券とビザのコピーを取られ、携帯番号も書くよう指示された。外国人記者が来たことは即座に分かる。「今どこにいますか。警察の担当者が会いたいと言っています」
住民の大半が少数民族のウイグル族で熱心なイスラム教徒が多い。砂嵐が吹き荒れ、独特のバザールや寺院、はだしの子や物乞いが多いなど雰囲気は隣国のパキスタンやアフガニスタンに似ている。違うのは「公安」「警察」と書かれた車両が多く、カメラを構えると警察官が「撮るな」と飛んでくることだ。
政府に対する住民の不満が蓄積し、時に暴力となって噴出。それを警察力で抑える悪循環に陥る。当局側にとって、見せたくないものを見ようとする記者は迷惑なだけ。「一刻も早くお帰りを」というわけだ。その後も監視と圧力は続いた。
広場にはウイグル族の農民が地主から“解放”した毛沢東に感謝したとの逸話を基に、2人が握手する像が立つ。だが見た限り、主人は変わってもウイグル族の庶民の立場はあまり変わっていない気がする。 (渡部圭)