2014年07月19日
「バンコクよりホーチミンでしょ」。東南アジアを訪れたい友人に何度言ったことか。バンコクは屋台がにぎやかで活気がある分、客の食べ残しによるすえた臭いを気にしないといけない。ホーチミンは屋台もそれほど多くなく、歩道もきれい。衣類、雑貨類も安い。
五月中旬、取材でホーチミンを訪れた。日系企業の駐在員も「バンコクより住みやすい」との意見が多く、やはりホーチミンいち押しと思ったら…。
市場を訪れた。あるブランドの時計が並べられ、値段は定価の三分の一。明らかに偽物だ。男は流ちょうな日本語で「これ本物だよ」。「そりゃ違うだろ」と水を向ける。
しばらく苦し紛れの弁明が続いた後「中国とベトナム、どっちを応援する?」と話をはぐらかし「ベトナムは長い間戦争をやった。みんな平和が好き。あなたと言い争いたくない」。
そう言いながら半分まで値引きしてくる。暑さとこの弁舌に目まいすら覚えた。
結局「偽物だって? 当たり前だろ。さっき日本人が大量に買った。そうして儲けてるんだろ」とニヤリ。図々しさもここまでくれば立派。(伊東誠)