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ロシア・エカテリンブルク 追悼施設 荒れる事情

2016年09月01日

 ウラル地方エカテリンブルク郊外の幹線道路を西へタクシーを走らせていると、右手に十字架のような高い記念塔が立っているのが目に入り、運転手に車を止めてもらった。

 そこは独裁者スターリンの大テロル(大粛清)の犠牲となった地元の人々の追悼施設だった。入り口の説明板によれば、大テロルの嵐が吹き荒れた1937、38年のわずか2年間に、ここで約1万8000人が銃殺されたという。犠牲者の名前、生年および死亡年月日がびっしりと記された赤茶けた追悼プレートが屏風(びょうぶ)形に連なっている。

 こうした施設はモスクワにもなく、極めて貴重だ。しかし敷地には雑草が生い茂り荒れ放題だった。20年前に市が建設したが最近は手入れがなされていないようだ。追悼に訪れる遺族や市民のための木製のベンチはぼろぼろで見る影もない。

 大祖国戦争(対独戦)勝利の記念施設なら、寒村に至るまで津々浦々まで多額の予算を投入し、よく整備されているのとは対照的だ。

 「しばらく前からお金が止まっちまってねえ」。管理人の男性はそう言っただけで詳しく語ろうとしなかった。 (常盤伸)