2011年10月15日
地下鉄のプラットホームに立つと、トンネルの中から吹いてくる生暖かい風が髪を乱し、まもなく耳をつんざくようなごう音とともに、濃紺の古ぼけた列車が入ってきた。
駅構内を見回すと、たいていの駅でシャンデリアや彫刻を施した柱が見える。「美術館のようだ」という人もいるが、こんなうるさい美術館は願い下げだ-と思いながら列車に乗り込むのが常だ。
車内でも、また大変。客席上部の小窓が開けっぱなしで、トンネル内にこだまする走行音がそのまま車内に。談笑なんて、まずできない。すっかり涼しくなったモスクワだが、トンネル内は暖かく、冷房がないから窓を閉めたら蒸す。
そんな状況にモスクワっ子の苦情が殺到したかどうかは知らないが、その列車たち、環状線を中心に新しくしていくそうだ。しかもエアコン付き!
市当局に聞くと、新駅もどんどん造って「モスクワに住む人すべてが自宅から地下鉄駅まで歩けるようにする」のが目標だとか。地下鉄を造る国内の全9社を総動員し、これから2年間に14~17の新駅を建設。その後も年間3、4駅をつくっていくそうだ。
新型列車は一部で既に走り始め、一昨年の冬にも乗ったことがある。静かで快適だ。でも困ったことがある。真冬も冷房がつけっぱなしで…。 (原誠司)