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モスクワ 「クマ」に足りぬエサ

2011年12月06日

 ロシア極東サハリンでは、そろそろ冬眠するはずのクマが街に現れ、飼い犬や猫を襲って食べる被害が続出している。エサとなる魚が、今夏少なかったのが原因らしい。例年なら9センチほどになっているはずの体脂肪が今年は3センチしかなく、腹をすかせているのだ。

 ロシアは今、下院選挙戦の真っ最中。メドベージェフ大統領は最大与党の先頭に立ち、個人宅訪問など市中に現れて市民の声を聴くパフォーマンスを見せ、それが連日報じられている。しかし、支持率低迷に加え、党員らの選挙活動の不正も相次いで発覚し、焦りの表情も見える。

 クマにかじられたロシアの国の形の白地図を描いた風刺ポスターを時々目にする。クマはロシア語でメドベージ。語感が似ているので、大統領はよくクマに例えられる。企業収益を圧迫するほどの賄賂を政権に近い役人が受け取り、政権も国民の血税を無駄遣いしているとして、ポスターは「大統領が国民を食い物にしている」と皮肉っているわけだ。

 さて、冒頭のクマに対して当局は、10トンの魚を森にばらまいて腹を満たし、街に来させない作戦に出た。「票が足りない」と市中に現れる空腹のクマさんに、野党側はどんな作戦で迎え撃つのか。そしてロシア国民の判断は? 4日に迫った下院選を注視している。(原誠司)