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北京 日本語学生にも逆風

2012年12月17日

 「外で日本語の練習をすることができなくなりました」。北京市内の大学で日本語を学ぶ3年生の女子学生は悲しそうな顔をした。

 「反日ムード」は、中国で日本語を学ぶ学生にも影響を与えている。この学生によると、教室の外で日本語の朗読の練習をしていた学生が、心無い中国人から「やめろ」と怒鳴られた。持っていた日本語の本を破り捨てられた学生もいるという。別の大学では、定期的に続いてきた日本語学科の中国人学生と日本人留学生の交流会が休止に追い込まれた。

 秋入学の中国では、この時期に日本に留学する学生が多いが、日本への渡航を心配する学生や親も少なくないという。

 それでも大半の学生は冷静だ。デモは「失業者や社会に不満を持つ人間がやったこと」と断じ、中国政府への不信も口にする。日本語を学ぶだけに「日本びいき」という面はあるだろうが、デモ隊の若者たちとは全く違う立場と意見を持っている。

 冒頭の学生は、日系企業への就職を希望しているというが、「今の日中関係なら難しいかもしれませんね・・・」と早くも心配顔だ。関係改善の糸口が見えない現状では、「すぐに良くなるよ」と励ますこともできなかった。真摯(しんし)に日本語を学ぶ彼らに、早く静かな環境が戻ってほしい。(佐藤大)