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プラハ 五輪の名花は永遠に

2013年12月18日

 金メダルを手に小首をかしげてほほ笑むと、しゃべり好きのおばちゃんといった雰囲気は消えうせ、まごうかたなき女の色香が立ちのぼった。カメラのレンズをのぞく私の背後で、通訳のチェコ女性が感嘆の声を上げた。「この人やっぱりきれい」。まったく同感だった。

 1964年の東京五輪女子体操で金メダル3つを取ったベラ・チャスラフスカさん(71)に、母国チェコのプラハで話を聞いた折のことだ。71年生まれの私は現役時代の彼女を知らないが、女らしく、たおやかな演技で「五輪の名花」とたたえられた往時の片りんを見た思いがした。

 そんな彼女だからこその苦言もあった。近年の世界の女子体操界は、難易度の高さを追うあまり、低年齢で小柄な選手による「曲芸的な演技」になっているというのだ。

 確かに動画サイトで昔の彼女の演技を見ると女性的な身のこなしや体の線の見せ方をとても意識しているのが分かる。子どものような選手が跳んだりはねたりする昨今の体操とはまるで別ものだ。

 今の日本では大人の女性の演技ができる存在として田中理恵選手(26)に期待しているというチャスラフスカさん。「女性的な選手がたくさん出てきた方が、男性も期待できるでしょ」と、いたずらっぽく笑った。 (宮本隆彦)