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香港 東洋の真珠 曇る輝き

2015年05月23日

 昨秋の香港民主化デモで息も絶え絶えだった梁振英行政長官が息を吹き返したようだ。

 香港基本法公布25周年にあたり過激な発言も。中国中央が香港の「一国二制度」を骨抜きにしているとの批判を「庸人自擾」と切って捨てた。

 直訳すれば「事もないのに空騒ぎをする」ぐらいの意味か。長官の発言は強がりかもしれぬが、事実とは大きく異なる。

 李克強首相は春の全国人民代表大会の演説で、香港の「高度な自治」など昨年の演説で削った表現を復活させ「一国二制度」への配慮をにじませた。

 そもそも、中央指導部の民主化抑圧に映る言動がなければ、危機感を強めた香港の学生らが79日にも及ぶ占拠デモに踏み切らなかったはずだ。

 「庸人」とは「ぼんくら」の意味もある。中国の友人に長官発言のニュアンスを聞くと「明らかに上から目線」とか。

 権力者の強権に自由な言論が萎縮している。デモの際に噴き出した長官の脱税疑惑にも、香港メディアは音無しの構えだ。

 かつて東洋の真珠と称賛された香港。経済の繁栄だけではなく、その自由さが放つ輝きだったはずだが・・・。 (加藤直人)