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香港 東洋の真珠 輝きどこへ

2016年11月30日

 2年前の秋、民主化を求める学生らの「雨傘運動」の熱気に包まれた香港を再訪し、社会の閉塞(へいそく)感にがくぜんとした。

 民主化運動の先鋭的な理論的指導者はいったん了承したインタビューを突然断ってきた。雨傘運動の背景について鋭い分析を示してくれた広東省の大学教授は「取材は勘弁して」と。

 こちらの立場に配慮して教授は言葉を濁したが、本紙に顔写真付きで掲載された記事に当局から“警告”があったようだ。

 何よりも香港市民の変化が気がかりだ。言論の自由の大切さを尊重する香港で、街頭取材を拒否されることはまれだった。今では「雨傘運動は失敗だった」と親中的な意見は臆せず語るが、中国に批判的な市民は「匿名でお願い」と及び腰だ。

 決定的だったのは中国指導者を批判する禁書を出版した香港の書店関係者の失踪事件だ。「高度な自治」を踏みにじり中国当局が越境して司法権を行使するなら、香港は安全圏ではないと不安に思う人が増えている。

 かつて「東洋の真珠」と称された香港。それは経済発展だけではなく、民主を守るとりでに与えられた称号でもあったと思うのだが・・・。 (加藤直人)