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北京 客も一体笑いの舞台

2016年05月31日

 天安門広場から南へ徒歩30分ほどの演芸場「徳雲社」で、中国の伝統的な漫才「相声(シァンション)」を聞いた。最前列の席は300元(約5000円)と高価だが、300席ある会場は連日、満員。入り口近くにはダフ屋もいる。

 丈の長い民族服「長袍(チャンパオ)」をまとった2人組が順番に登場。ボケとツッコミ役に分かれるのは日本の漫才と同じでも、1組で最低30分、大トリは1時間近く話し続ける。もう「2人芝居」と言った方がいい。

 早口でくだけた中国語のため、内容は正直よく分からない。それでも、かつての下町の売り子のものまねをしたり京劇風の甲高い声で歌ったりと、長丁場を飽きさせない工夫が随所にあり、退屈しなかった。

 特徴的なのは、演者と客の掛け合いが多いこと。ボケ役に振り回され続けた相方が突然、逆襲に出て「みんな俺が正しいと思うだろ? 好不好(ハオプーハオ)?」と呼びかけると、会場から「好(そうだ)!」の大合唱。若い女性が爆笑して彼氏の肩をバンバンたたき、お年寄りと孫が顔を見合わせて大笑いと、客の反応も面白い。場内全体が笑いの舞台のようで、元が取れた気分で会場を後にした。 (平岩勇司)