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韓国・平昌 冬季五輪控え光と影

2017年05月12日

 白銀の世界で小柄な女性が空を舞い100メートルを飛んだ。冬季五輪を控える平昌で2月、スキージャンプの高梨沙羅選手が、男女通じて歴代最多タイとなる53勝を飾った瞬間を見守った。男子のレジェンド・葛西紀明選手も取材陣の前に現れ談笑するなど、勝利に花を添えた。

 冬季五輪本番を前に、組織委員会はPRに熱心だ。工期の遅れが懸念された競技場も90%以上が既に完成し「残るは運営面の準備だけ」と胸を張る。

 だが地元民の中には、こうした「繁栄」に疑問を投げかける人も。タクシー運転手の全在九(チョンジェグ)さんは「もうけているのはリゾート施設の一部だけだ」と吐き捨てた。高速バスの発着ターミナルの建物は今も老朽化が激しく、周辺の道路はデコボコが目立ち整備済みとは言い難い。

 全さんは運転しながら「これで自慢なんて恥ずかしい。競技場だって大会が終われば金食い虫になる」と続けた。

 折しも、長野市で1998年の冬季五輪で使われたそり競技場の存続問題が取り沙汰されていた時期。「長野に学ぶべきだったんだ」と全さん。光と影を抱えながら、平昌大会は1年後に迫る。 (上野実輝彦)