2017年08月18日
取材を終え、フィリピンの首都マニラの繁華街マラテ地区にあるホテルに戻る途中だった。「人混みでは気を付けて」との知人らのアドバイスに従い、リュックサックは背負わずに前に抱きかかえて歩いた。だが-。
左腕を包帯で巻き、三角巾で首からつるした10歳前後の少年が前から近づいてきた。いきなり左腕を私の喉元にぶつけた。ぐいぐいと押してくるので、こちらはのけぞりそうになる。少年は逃げるように去った。
リュックを見たら、2つあるポケットのうち、1つの口が開いていた。私がひるんだすきに右腕でファスナーを開けたらしい。中に入れていた小物がなくなっていた。幸い貴重品は別のポケットに入れていて無事だったが、まさか自分がスリの被害に遭うなんて…。骨折も偽装だったのかと、正直へこんだ。
強権的取り締まりを続けるドゥテルテ大統領のおかげで「薬物犯罪者が減り、街は安全になった」との声をあちこちで聞いた。だが、知人は「路上犯罪は依然として多発している」と話していた。物乞いをしているストリートチルドレンの姿もたびたび目撃した。厳しい現実を身をもって知った。 (山上隆之)