2018年05月07日
想像してほしい。ふと見上げると、キッチンの照明に、数10匹の羽アリが群がり、飛び回っている光景を。
マンションの部屋中に「ぎゃー」という妻の悲鳴が響く。3歳の娘は壁に身を寄せ「日本に帰ろうか…」。私はあっけにとられ、うろうろするばかりだ。
最終的に居間の照明におびき寄せ、殺虫剤で成仏願ったが、対処法を巡る口論を経て、家庭の平穏まで小1時間を要した。
周りの知人らも、羽アリ絡みの恐怖体験を明かす。奴らはごくわずかな隙間から忍び込む。
やっかい者は他にもいる。昨年、バンコクに来て間もなく、長さ約1センチの灰色の物体が、いくつも壁にへばり付いていた。
どうやらガの幼虫で、衣服を食うらしい。支局のタイ人助手に写真を見せると、ドスの利いた日本語で「コロス」。仏教の影響で穏やかとされるタイ人も嫌なものは嫌だとみえる。
希少種から食用まで、タイでは虫の話題に事欠かない。先日マンションの植木の葉をはむアオムシの動きに、娘が見入っていた。生き物を育む環境が豊かとも言える。少なくとも「害」かどうかは、人間の勝手な線引きだろう。 (北川成史)