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ロンドン 難しい理髪店の会話

2018年05月25日

 ロンドンは世界中からさまざまな民族が集まるが、それを痛感する場所の一つが理髪店。理髪師があまりに多様なので、話を合わせるのがしんどい時がある。

 近所の行きつけの店では、南アフリカ出身の女性が担当してくれることが多い。非常に陽気で人懐っこく、理髪中もしきりに話し掛けてきてくれる。「東洋人の髪の毛を切るのはめったにないの」などと。

 しかし少し聞き慣れないアクセントと私の語学力不足で、会話を続けるには相当な集中力が必要。しかも悲しいことに、南アのことは詳しくない。申し訳ないが、店を出ると、緊張から解放されてほっとする。

 日本人経営の店に行けばいいのだが、私にはちょっと高い。そこで目先を変えようと、アラブ系移民の多い地区の店に。日本人の私にはあまり話し掛けないだろうと期待して。

 ところが髪を切ってくれたシリア出身のアリさん(32)はサービス精神旺盛。「日本人は初めてだ」と習いたての英語で話し掛けてくる。最初は子どもの話で盛り上がったが、次第にアサド政権批判に発展。興味深いのだが、「今はちょっと…」と口に出かかった。 (阿部伸哉)