2018年12月11日
即席の高座の後方には、ロシア語の字幕を映すスクリーン。日ロ交流年の関連行事として、モスクワで落語公演があった。字幕では伝わりづらい話芸の「間」、そして異文化。それでも、爆笑をかっさらっていったのはさすがだった。
出演した桂歌蔵さん(54)は故桂歌丸さんの弟子。入門前、英国に滞在した経験もあることから「海外で表現したい思いがあって」と、15年前から海外公演を始めた。公演先はすでに十数カ国。字幕の出るタイミング、客の反応を考慮して、テンポを微調整するという。
会場は約200人で満員。「時そば」「死神(しにがみ)」などの演目だったが、合間の小話が特に大受けだった。もともと「アネクドート(小話)」を好む国民性。私の隣に座っていた女性は「ロシアと同じ小話があって驚いた」と話していた。
ロシアでは5都市で公演。ステージ係がたばこを吸いにいって幕を下ろし忘れたり、おあとがよろしくないこともあったそうだ。歌蔵さんは苦笑しながら「ロシア人はおおらか。こっちにも寛容さがないと笑わせられないね」。しっかりつぼを心得た様子だった。 (栗田晃)