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カイロ 差別感情いまだ強く

2019年03月04日

 ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」で、クイーンのフレディ・マーキュリー役を演じた俳優ラミ・マレックは米国人だが、両親がエジプト出身。カイロの映画館に行くと、拍子抜けするほど閑散としていた。

 映画を見て納得した。同性愛を示唆する場面がことごとくカットされている。後で調べると、フレディが苦悩しながら同性愛を彼女に告白している大事なシーンも抜けていた。それでも、知人は「子どもには絶対に見せない」と言い切った。

 エジプトでは、同性愛そのものを禁じる法律はない。だが、性的少数者(LGBT)をタブーとするイスラム教徒が大半で、同性愛者が拘束される事例は後を絶たず、一昨年9月、コンサートでLGBTのシンボル、虹色の旗を掲げた人たちが「逸脱行為の扇動」で逮捕されている。

 さらに言えば、主演マレックの両親はイスラム教徒ではなく、キリスト教の一派コプト教徒。エジプトの人口の1割でしかない少数派で、たびたびイスラム過激派の標的とされる。劇中でフレディの印象的なせりふがあった。「私が何者かは私が決める」。それをかなえるには、壁はまだまだ厚い。 (奥田哲平)