2021年08月24日
「江南スタイル」という曲で人気を博した韓国の歌手「PSY(サイ)」を覚えている読者はどれだけいるだろうか。「乗馬ダンス」と呼ばれる少しコミカルな振り付けが話題となったのは、すでに10年近く前だ。その彼をまさか中国山東省の青島で見るとは思わなかった。
「アジア最大の屋外イベントを目指す」と称する青島ビール祭を訪れた時。「韓国から来てくれました」という紹介とともにステージに現れた。小太りのサングラス姿は、かつてテレビやネットで見たのと変わらない。会場が暑すぎるせいか、少し気だるそうに踊っている。
巨大な会場では上半身裸の男たちが景気よくビールをあおっていた。韓国の音楽業界も、新型コロナウイルス禍からいち早く回復した中国経済が頼りのようだと感じた。
ところが、中国各地でもインド由来の変異種(デルタ株)が広がりつつある。青島では感染が確認されていないにもかかわらず、ビール祭が突然閉幕してしまった。私が訪れた翌々日だった。隔離を経て韓国から渡航してきたはずのPSYも興行の場を失い、途方に暮れているのではないだろうか。 (中沢穣)