2022年09月15日

　北朝鮮が発表する新型コロナウイルスの死者数が少なすぎることに、韓国で暮らす脱北者の間でもいろんな見方がある。実態を反映していないとの受け止めが大半。地方都市の住民と連絡を取るＮＫ知識人連帯の金興光（キムフングァン）さんは「各地で集計した発熱患者や死者数を中央に報告する過程で、上層部にそんたくして数字を減らしている」とみる。

　一方、北朝鮮で医師だった崔政訓（チェジョンフン）さんは「北の住民はさまざまな感染症にさらされてきたので、もともと免疫力が発達している」と指摘する。腸チフスやコレラなどがしばしば流行する劣悪な環境ゆえ、致死率の低いコロナのオミクロン株には「住民が体で耐えている面もある」との見立てだ。

　北朝鮮の人は精神力が強く、身体が本来持つ治癒能力を最大限引き出せる-との説も。ある人は「私も韓国に来てがんを克服した際、模範事例だと医師に言われた」と語った。

　外部から隔絶された国だけに真相は定かでない。ただ、体制批判と厳しい環境で生き抜いてきた自負心が入り交じる脱北者たちの声に、それなりの真実味を感じる。

　（木下大資）