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マニラ 即席「演台」の柔軟さ

2023年05月16日

 全国各地で相次ぐ広域強盗事件を巡り、フィリピンのマニラ市内にある司法省には連日、多くの報道陣が詰めかけ、レムリヤ法相や報道官がぶら下がり会見に応じた。当初は後方にカメラマンが控える中、テレビ局のスタッフらは前方で腰をかがめてマイクを差し出していた。

 ところが、2月2日午後の会見前、現地の記者が司法省内の記者クラブから、レストランの前などに置かれている「メニュースタンド」のような台を運び出してきた。木製で年季が入っており、足元は黒い箱に粘着テープで固定されている。「PRESS OFFICE」の文字はかすれてほぼ読めない。

 ABS−CBN、GMAネットワーク、CNN…。社名が書かれたマイクを、不安定な台の上に次々と重ねていくテレビ局のスタッフたち。時折、台が揺れると、「おいっ」と声が上がる。隙間には携帯電話やテープレコーダーも置かれた。

 その後、レムリヤ氏が姿を見せ、即席の「演台」の前で会見が始まった。マイクが置かれ、大臣が前に立つと、メニュースタンドには見えないから不思議である。この柔軟さは見習いたいとつくづく。 (藤川大樹)