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米リトルハバナ ピーナツと望郷の念

2023年05月17日

 リトルハバナは、米南部フロリダ州マイアミにあるキューバ系住民が多い街。パステルカラーの建物が並び、同国特産のカクテルや葉巻を味わえる店も多い。1959年のキューバ革命後、さまざまな事情で渡米する人々の拠点となってきた。

 その街角でフランシスコ・カサーニャさんを見かけた。細く丸めた新聞紙にピーナツを詰め、行き交う人々に「たった1ドル(約130円)だよ」と売り歩く。名前を知っているのは、2年前に取材で訪れた際、街頭取材に答えてくれた人だからだ。

 その時のテーマは、改善が進まない米国とキューバ関係について。母国キューバへの経済制裁を憂うカサーニャさんは「いつか貧しさを脱した故郷に帰りたい」と話していた。

 「僕のこと覚えていませんか。2年前に少し取材させてもらった日本人ですけど」。思い切って話しかけてみると「えーっと、ああ、もちろん…」とカサーニャさん。明らかに記憶がなさそうだが、悪びれず「ピーナツ買わないか」とにっこり。

 確か2年前で65歳。早くその笑顔がキューバに戻りますように。ピーナツをかじり、そう願った。 (杉藤貴浩)