【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 「或る列車」で出発
「或る列車」で出発

「或る列車」で出発 長崎県、佐賀県 優雅な気分に癒やされ

出発直前の人気観光列車「或る列車」=長崎市の長崎駅で

出発直前の人気観光列車「或る列車」=長崎市の長崎駅で

 空路で長崎入りし、長崎駅からJR九州自慢の観光列車「JRKYUSHU(きゅうしゅう) SWEET(スイート) TRAIN(トレイン)『或(あ)る列車』」に乗り込んだ。約3時間をかけ、佐世保駅(長崎県佐世保市)を目指す。

 好天に恵まれ、或る列車の黄色と黒のボディーは午後の日差しの中でキラキラと輝き、豪華絢爛(けんらん)に見えた。車内に入ると、壁、床、天井などに木材がふんだんに使われ、「和」の雰囲気だ。2両編成で、1両は2人掛けの個室が8室、もう1両は2人掛け、4人掛けのテーブル席になっており、2両で定員36人。九州にこだわった食事、スイーツが提供される。

 午後3時37分に出発。すぐに大村湾沿いに出て、左手に海を見ながら、進む。

 食事類は、客室乗務員がコース料理のように出す。この日の食事メニューは「鹿児島県首折れ鯖(さば)と薩摩甘エビ、佐賀県新米のちらし寿司(ずし)」「九州産甘鯛(あまだい)と色鮮やかな根菜類、カボスのポン酢仕立て」「佐賀県みつせ鶏と冬野菜のサラダ」など。

「或る列車」の車内。乗務員が笑顔でサービスしてくれる

「或る列車」の車内。乗務員が笑顔でサービスしてくれる

 スイーツは「福岡県リンゴのキャラメル風味」「鹿児島県スイートポテト」「鹿児島県落花生と沖縄県バナナのチョコレート風味」「熊本県ゴールドキウイとレモンのゼリー、大分県ミント風味」が全部食べられる。

 乗客らは食べ終わると、「おいしかった」「満足した」など賛辞の大合唱だった。

 海の見える駅の千綿(ちわた)駅(長崎県東彼杵(ひがしそのぎ)町)で、夕焼けを見るため、約10分間停車した。目の前の大村湾は、波はなく、大きな湖のよう。波の音も聞こえない静かな夕暮れが楽しめた。

 佐世保に到着し、九州を代表するテーマパーク「ハウステンボス」(佐世保市)に隣接するJR九州系のホテルに泊まった。夜に窓から、ハウステンボスのイルミネーションが見えた。光に誘われて、入園した。世界最多といわれる1300万個の発光ダイオード(LED)がつくり出す、彩り鮮やかな光の王国を散策した。時刻は閉園の午後10時に近く、残っていた入園者は多くはなかった。

眼下に広がるハウステンボスのイルミネーション。観覧車から手持ちのカメラで撮影=長崎県佐世保市で

眼下に広がるハウステンボスのイルミネーション。観覧車から手持ちのカメラで撮影=長崎県佐世保市で

 ふと見ると、観覧車に乗車待ちの行列がない。乗ってみた。上がっていくにつれ、眼下に光の園が広がっていった。この光の世界を独り占めしているような気がしてきて、自然に喜びが湧き上がってきた。今年1年に起きた嫌なことが吹き飛んだかも。夜の遊園地、一人観覧車、疲れた心の癒やしに効きます。

武雄温泉のシンボルとなっている、辰野金吾設計の楼門=佐賀県武雄市で

武雄温泉のシンボルとなっている、辰野金吾設計の楼門=佐賀県武雄市で

 翌日、福岡を目指してバスと在来線で旅を続けた。途中、「有田焼」の有田(佐賀県有田町)で昔ながらの伝統を守る「源右衛門窯(げんえもんがま)」を見学し、武雄温泉(同県武雄市)に立ち寄った。

 同温泉は約1300年の歴史を持ち、国の重要文化財指定の高さ12.5メートルの楼門がシンボルだ。楼門は、東京駅を設計した佐賀県出身の建築家、辰野金吾の設計で、東京駅の開業とほぼ同時期の1915(大正4)年に完成した。

 東京駅丸の内駅舎にある八角形ドームには、十二支のうち8つのレリーフが飾られている。あと4つの子(ね)、卯(う)、午(うま)、酉(とり)が、この楼門の2階にいる。来年3月まで火曜日を除く毎日午前9時から1時間、公開されているので、探してみては。

 楼門から中へ入ると、大衆浴場がある。そのうちの「元湯」に入った。建物は1876(明治9)年の建築とされ、現役で使われる浴場施設では最古級だ。かつての湯治場の雰囲気を色濃く残している。

 湯船は「ぬる湯」(湯温42~43度)、「あつ湯」(同44~45.5度)の2つ。あつ湯に体を沈めると、旅の疲れがゆっくりと癒やされていった。

 文・写真 草間俊介

(2019年12月20日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
中部国際空港から長崎空港へは定期便が飛んでいる。
同空港から長崎市内へはバスで。
ハウステンボスはJRハウステンボス駅から、武雄温泉はJR武雄温泉駅からそれぞれ徒歩で。

◆問い合わせ
ハウステンボスについては公式ホームページまたはハウステンボス総合案内ナビダイヤル=(0570)064110=へ。

おすすめ

有田焼・源右衛門窯

有田焼・源右衛門窯

★或る列車
22日まで長崎-佐世保間で運転。
その後、定期点検に入り、来年3月に運転再開予定。
コース、料金などは専用の公式サイト=列車名で検索=で公表される。
電話での問い合わせは、同列車のツアーデスク=電092(289)1537(水曜休業)=へ。

★有田焼・源右衛門窯
磁器発祥の地・有田に窯を築いて260余年の歴史を持つ。
「古伊万里資料館」を併設する。
工房が無料で見学できる(月-金曜午前8時~午後5時、土曜不定休)。
必ず事前に電話で相談を。
記者が訪れた際は、金子昌司社長が有田焼の製造過程や歴史を語ってくれた。
商品の購入もできる。
詳細はホームページで。
電0955(42)4164。

★武雄温泉・元湯
午前6時半から午後11時まで受け付け。
入浴料大人450円、3歳~小学生220円。
元湯の休業日や、楼門の内部公開などは武雄市観光協会のホームページで。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。